4. 消費税の計算の概要
① 消費税の仕組み
■消費税の負担・納付
消費税の負担者=消費者
消費税の納付者=事業者
消費税は、物品等の販売を通じて次々に転嫁され、最終的には消費者が負担することになります。
■課税の仕組み
消費税は、物品の販売たびに課税されて二重三重に課税されないよう仕入に係る消費税を控除する仕組みとなっています。
消費税の負担と納付
上図のように、商品代金10,000に対して消費税は500課税されます。
消費者は、商品代金10,000に対する500の消費税を負担していますが、その消費税を税務署に申告・納付はしていません。
なお、負担した消費税は小売業者に商品代金10,000と共に支払っています。
小売業者は、消費者から商品代金10,000と共に消費税500を受取っていますが、一方で卸売業者に仕入代金5,000円と共に消費税を250を支払っています。
そこで、受取った消費税500と支払った消費税250の差額250を申告・納付します。
ここで、小売業者は消費税を全く負担していないことに注意してください。
つまり、小売業者は消費税が仮になかった場合、売上と仕入の差額5,000の儲けがあるわけですが、消費税があった場合もこの儲けの5,000は変わらないことに注意してください。
つまり、売上10,500-仕入5,250-消費税納付250=5,000となり、消費税が課税されても消費税が課税されなくても儲けの金額は同じになっています。
生産者、卸売業者も同様です。
生産者、卸売業者、小売業者は、消費税を負担していませんが、それぞれ100、150、250の合計500を申告納付しています。
一方、消費者は消費税を申告納付していませんが、500を負担しています。
上記のように、消費税は負担者と申告・納付を行うものが異なるという特徴があります。
また、商品が転々流通する段階で二重三重に課税されない仕組みをとっていることが分かります。
■消費税の税率
消費税と一般的には言われていますが、正確には消費税と地方消費税があります。
平成26年3月31日までは消費税は4%、地方消費税は1%合わせて5%となっています。
なお、消費税率は以下のように引上げられる予定です(H25.12.10現在)。
平成26年 4月1日以降:消費税6.3%、地方消費税1.7%の合計8%(確定)
平成27年10月1日以降:消費税7.8%、地方消費税2.2%の合計10%(未定)
② 消費税の課税対象
課税対象となる取引をまとめると、下図のとおりです。
上記のほか輸入取引は、非課税取引以外のものが課税貨物の引取時に課税されます。
■国内取引の課税対象の要件(次のすべてを満たす取引)
1. 国内取引
2. 事業者が事業として行う取引
3. 対価を得て行う取引
4. 資産の譲渡・貸付、役務の提供
■事業者が事業として行うものとは
法人:すべての取引
個人:事業者の立場で行う取引(家事用資産の売却は含まない)
事業:対価を得て行われる資産の譲渡等を反復、継続かつ独立して遂行すること
■輸入取引の場合
保税地域から引き取られる外国貨物
③ 非課税取引
土地・借地権等、有価証券等、利子等、切手・印紙等、国等が徴収する手数料(住民票の発行手数料など)、医療、介護、助産、埋葬料、障害者用物品、授業料・入学金等、教科書、住宅の貸付
④ 輸出免税
次のような輸出取引等を行った場合、消費税が免除されます。
1. 国内からの輸出として行われる資産の譲渡・貸付
2. 国内と国外との間の通信・郵便・信書便
3. 非居住者に対する鉱業権・工業所有権・著作権・営業検討の譲渡・貸付
4. 非居住者に対する役務の提供
■免税の適用を受けるためには
・輸出許可書、帳簿や書類を7年間保存することが必要
⑤ 納税義務
■納税義務者
国内取引:課税資産の譲渡等を行う事業者
輸入取引:外国貨物を保税地域から引き取る者(事業者に限らず消費者も含む)
■納税義務判定
■届出書(納税義務関係)の提出
・免税事業者から課税事業者となった場合
期限:速やかに
・課税事業者から免税事業者になった場合
期限:速やかに
・免税事業者が課税事業者を選択する場合
期限:課税期間開始の前日(設立1期目の場合は課税期間の末日)
・課税事業者を選択していた事業者が選択を取りやめて免税事業者に戻る場合
期限:課税期間開始の前日
■課税期間の特例
原則:事業年度(1年)
例外:3月特例または1月特例として、課税期間を3ヶ月毎または1ヶ月毎にできる
■届出書(課税期間の特例)の提出
・特例の適用を受ける場合
期限:適用する課税期間の初日の前日
・特例の適用をやめる場合
期限:やめる課税期間の初日の前日
なお、2年以上継続した後でなければ適用をやめることはできない
・他の特例に変更する場合
期限:変更する課税期間の初日の前日
原則2年以上継続した後でなければ変更はできない
⑥ 納税義務の成立時期
■国内取引
課税資産の譲渡等をした時 → 法人税等の課税所得計算の収益計上とほぼ同じ
■輸入取引
課税貨物を保税地域から引き取る時
⑦ 課税標準
■国内取引
課税資産の譲渡等の対価の額
(酒税・たばこ税等の個別消費税額を含む)
■輸入取引
課税対象となる外国貨物の引取価額
(CIF+個別消費税額+関税額)
⑧ 納付税額の計算方法(概要)
■一般課税
課税売上に係る消費税額-課税仕入等に係る消費税額
■簡易課税
課税売上に係る消費税額-課税売上に係る消費税額×みなし仕入率
■留意点
・簡易課税制度の選択
基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下の場合に選択できます
・一般課税
課税仕入等の事実を記載した帳簿と請求書等を7年間保存することが必要
保存がない場合、仕入税額控除を受けられません
・簡易課税
簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります
仕入控除税額はみなし仕入率で計算するため、還付は一切受けられません
多額の設備投資等で一般課税なら還付の場合でも還付は受けられません
2年間継続した後でないと選択の取りやめはできません
■一般課税の仕入控除税額の計算方法
課税売上高5億円以上 かつ 課税売上割合95%以上:全額控除
課税売上高5億円超 または 課税売上割合95%未満:個別対応方式 or 一括比例配分方式
■全額控除
課税仕入等に係る消費税額の全額
■個別対応方式
課税仕入等に係る消費税額を以下の3種類に分類し、仕入控除税額を計算
1. 課税売上のみ対応:全額仕入控除税額
2. 非課税売上のみ対応:全額控除できない
3. 共通対応 :課税売上割合で按分
なお、共通対応で按分計算する課税売上割合は次の届出書を提出することで課税売上割合に準ずる割合で計算することができます
たまたま土地の売却があった場合、非課税売上割合が大きく下がり、控除できない金額が多くなるので、そのような場合は、質疑応答事例を参考に事前に申請書を提出すると税額負担が軽減されます。
■一括比例配分方式
個別対応方式のように3区分していない場合やこの方式を選択する場合の計算方法
課税仕入等に係る消費税×課税売上割合
■留意点
・一括比例配分方式の場合、課税売上割合に準ずる割合は適用できません
・一括比例配分方式を選択した場合、2年間継続適用した後でないと変更できません
・個別対応方式から一括比例配分方式への変更は制限はありません
⑨ 簡易課税制度
■みなし仕入率
第一種:90% 卸売業
第二種:80% 小売業
第三種:70% 農林水産業、建設業、製造業等
第四種:60% その他
第五種:50% 不動産業、運輸通信業、サービス業
■留意点
簡易課税制度を選択した場合、届出は免税事業者になった場合にも効力は続いているため、その後課税事業者になった場合は簡易課税制度を適用することとなる。
消費税課税事業者選択届出書を提出した事業者は、課税事業者となった日から2年を経過する日の間に調整対象固定資産の課税仕入を行い、一般課税で申告を行うと、3年間は免税事業者になれず、また簡易課税も適用できない。
⑩ 申告・納付手続
■国内取引
原則:決算日後2月以内
課税資産の譲渡等がなく、かつ納付すべき税額がない場合、確定申告書の提出は不要
延長制度はありません
■中間申告
上記納付額のほか仮決算を行い計算した消費税額により中間申告・納付ができます。
仮決算で中間納付額がマイナスとなっても還付は受けられません。
中間申告期限までに中間申告書を提出しないと納付書に記載した金額で中間申告書の提出があったとみなされます。
したがって、仮決算を行わない場合には納付のみ行えばよいことになります。
中間申告・納付の期限は2ヶ月以内
ただし、年11回中間申告・納付を行う場合最初の1月分は3ヶ月以内
■輸入取引の場合
納期限 :外国貨物を保税地域から引き取るまで
申告手続:所轄税関長に輸入申告書を提出して納付